デジタル・トランスフォーメーション(DX)の第一歩を踏み出す際に、多くの企業・DX担当者が抱える疑問にお答えします。
- これからDXを始めたいが、どこから手をつければよいのかわからない。
- 既にDXに着手したが、初期段階でのつまずきを避けたい。
- 社内の業務効率化やデジタル化に向けた具体的な手順を知りたい。
この記事では、DXを成功させるための最初のステップを具体的に解説し、あなたの疑問や課題に応える情報を提供します。
1. 社内の課題を抽出する
社内の課題を4つのカテゴリに分ける
DXを成功させるためには、まず社内の課題を明確にすることが重要です。社内の課題を以下の4つのカテゴリに分けてみましょう。
「何となく全部デジタル化した方がいいと思ったからしてみたけど、作業も増えたし何も活用できていない」というパターンのDXをいくつも見てきたので、自分の会社に今何が必要であり必要でないかをしっかりを吟味するための手法です。
1. データ化可能かつ効率化する
このカテゴリには、デジタル化と自動化が可能な業務プロセスが含まれます。
例えば、紙ベースの書類管理をデジタル化し、自動化ツールを導入することで業務効率を大幅に向上させることができます。
2. データ化可能だが効率化はしない
デジタル化は可能ですが、自動化や効率化にはつながらないプロセスが該当します。
例えば、顧客の声をそれぞれの営業がヒアリングしていてもそれをデータ化していないとします。これをデータ化するとなると、それまでは発生していなかった「ヒアリング内容をシステムに入力する」という作業が増えることになります。
3. データ化不可能だが効率化する
デジタル化は難しいものの、業務プロセス自体を見直し効率化することが可能な分野です。
例えば、「現在顧客とのやりとりにFAXを使っているが、これは顧客要望もあって変えることができない。しかしこれがなくなれば作業が大幅に減りそう。」などです。
4. データ化不可能で効率化しない
デジタル化も効率化も難しいプロセスです。
このカテゴリの業務はDXの初期段階では優先度が低く、後回しにしても問題ありません。
カテゴリ分けの具体例
社内で行っている業務を具体的に見直し、上記のカテゴリに分類してみましょう。
例えば、経理部門の業務を次のように分類できます。
- データ化可能かつ効率化する: 請求書の電子化と自動支払いシステムの導入
- データ化可能だが効率化はしない: 会計データのデジタル保存
- データ化不可能だが効率化する: 月次報告のフォーマット改善
- データ化不可能で効率化しない: 手書きのサインが必要な契約書管理
2. DX推進のための準備
DXを実施する一番の目的を定める
失敗するDXの共通点として、目的がふわっとしている、または何となく全部よくしたいというものが挙げられます。
「DX化すれば、業務も効率化するし、データも集約して自動で可視化できるし、バックオフィス業務や工数管理も自動化できるんでしょ?」
はっきり言いますが、初めからこのような認識では、DXは絶対に失敗します。
DXによって業務効率化をしたいとなった場合、自動化をするためにはある程度フォーマット化されたシステムに合わせて、データを入れていく必要があります。なので、これまでは営業ごとに管理していた独自の情報やノウハウの蓄積は難しくなるでしょう。
逆に、DXでデータを集約してマーケティングに活用したいとなった場合には、これまで発生していなかった入力業務や、口頭のやりとりでスピーディにできていた作業に承認プロセスが必要になったりします。
このように、全てがうまくいくDXというのはすぐには達成できません。
まず最初は、一番の目的を達成し、その後他の部分をさらに良くしていく
このサイクルを続けていくことが本当のDXです。
何となく良くしたいDXは、羅針盤なしで大海原を放浪するようなもので、いつまで経っても目的地に辿り着くことができません。
明確なビジョンと目標設定
DXの目的や目標をさらに明確に設定しましょう。
具体的なKPI(重要業績評価指標)を定め、進捗を定期的に評価することが重要です。例えば、以下のような目標を設定できます。
- 短期目標: 3ヶ月以内に主要業務プロセスのデジタル化を50%達成
- 中期目標: 1年以内に社内全体の業務効率を30%向上
- 長期目標: 3年以内に新しいビジネスモデルを構築し、売上を20%増加
3. 内部DX人材の育成
内部DX人材の重要性
DXを推進するには、外部ベンダーに頼るだけでなく、社内にDX人材を育成することが必要です。
内部DX人材は、企業の文化や業務プロセスを深く理解しているため、より効果的にDXを推進できます。
ベンダーに任せっきりのDXで、成功している企業に未だ私は出会ったことがありません。
DX化に成功している企業には必ず内部にDX担当者、または役員クラス自らが窓口となり、主体的にDXを推進していますし、逆にそういう会社としか私は仕事をしないようにしています。(そうしないと絶対に炎上するので…)
継続的な教育とトレーニング
社内のDX人材を育成するためには、継続的な教育とトレーニングが必要です。
「プログラミングを学ぶ」のような話ではなく、ITにできること、できないことやサービス利用やサイト制作費用を理解し、DXを推進できる人材が必要になります。
ITベンダーでの業務経験がある人を採用する、上記のような内容で講義をしてくれる人を読んで研修を行う、などの手法が考えられます。
4. スモールスタートの実践
パイロットプロジェクトの導入
DXの取り組みは、スモールスタートで始めることが推奨されます。
まずは小規模なパイロットプロジェクトを実施し、その成果を基に大規模展開を計画します。
例えば、特定の部門での業務自動化を試験的に導入し、効果を評価することができます。
先ほども書いた通り、最初から全て叶えようとはせずに1000里の道も1歩からです。
成功事例の共有
パイロットプロジェクトで得られた成功事例を社内で共有し、他部門への展開を促進します。
成功事例は、他の社員のモチベーション向上にもつながり、DX推進の原動力となります。
5. 継続的な改善と評価
定期的な進捗評価
DXの進捗を定期的に評価し、必要に応じて戦略を見直します。
評価の際には、設定したKPIを基に、目標達成度や課題点を明確にします。
フィードバックループの確立
社員や顧客からのフィードバックを積極的に収集し、DX戦略の改善に役立てます。
フィードバックループを確立することで、常に現場の声を反映した柔軟な対応が可能になります。
6. 技術とツールの選定
適切な技術とツールの選定
DXを成功させるためには、適切な技術とツールの選定が重要です。
クラウドコンピューティング、AI、IoT、ビッグデータ解析など、各業務に適した技術を導入し、業務効率を最大化します。
どのツールが良いかなどについてはDX担当者か、ITの専門家に聞くのが良いです。
ただ、ITの専門家といっても、sale○forceなどに代表される、自社でサービスを提供しているような会社は、もちろん自社製品しか紹介できないので、コンサル、ベンダー(これもサービス会社とズブズブの可能性があるので注意が必要)、個人事業主などに聞くのがお勧めです。
ツールの導入とトレーニング
選定したツールを導入し、社員が効果的に活用できるようにトレーニングを実施します。
ツールの導入初期にはサポート体制を整え、社員が安心して利用できる環境を提供することが重要です。
7. コミュニケーションの強化
社内コミュニケーションの向上
DXを成功させるには、社内のコミュニケーションを強化することが不可欠です。
定期的なミーティングや情報共有の場を設け、全社員がDXの進捗状況や目標を共有できるようにします。
新たに出た課題をどうすればデジタル化によって解決できるかを考え、それを実行するサイクルこそがDXの本質になります。
オープンなフィードバック文化の醸成
社員が自由に意見やアイデアを出せるオープンなフィードバック文化を醸成しましょう。
これにより、DXの取り組みがより革新的で実現可能なものとなります。
8. パートナーシップの活用
外部パートナーとの協力
DXを成功させるためには、外部パートナーとの協力も重要です。外部の専門知識や技術を活用し、社内リソースを補完することで、DXの効果を最大化します。
ベンダーとの連携
ベンダーとの連携を強化し、最新の技術やソリューションを適時導入します。
ただし、外部ベンダーに依存しすぎず、社内にDX推進のノウハウを蓄積することも忘れないようにしましょう。
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